日本にゴーダチーズがない理由
きみは日本の商店街や市場でこんな光景を見たことがあるだろうか。
約3年前に私は10年勤めた会社を辞めて、退職金をはたいてヨーロッパへ放浪した時の光景だ。
幼い頃に観た「アルプスの少女ハイジ」で、毎日ヤギの新鮮な乳と、おじいさんが釜で手作りしたラクレットチーズをパンにたっぷり付けて、それはそれは美味しそうにほうばるハイジが、とても幸福で愛らしかった姿を思い出す。
かつてはスイスでは、1年以上かけて熟成させたチーズがお金の替わりとなって、物物交換したり、銀行からの借入れの担保にチーズが利用されていたという。
帰国してから、ぼんやりと酪農について調べていたところ、北海道の「おこっぺ」という村の酪農家 冨田さんの話を見つけた。
5:30あたりからの悲痛な叫びを怒りを通り越して穏やかに語っている。
彼は土作りから考える「循環農法」を実践しているのだと言う。
健康な牛は良質な牧草を食べて大地へ排泄する。
糞尿によって無機化される土は、また新たな牧草を育み、それを牛が食べることで牛乳が美味しくなるのだという。
ずっと前から知っていたことだが、我が国の「拝金見せかけ文化」の例は後を絶たない。
例えば、スーパーに並ぶ野菜は見た目と価格だけが重要視され、その味であったり、その効能であったりは二の次で、生産工程など聞く耳を持たない。
例えば、建物は擬洋風と言って、丹念にレンガを積んだと思しき石造りの壁は、触ってみるとプレハブにレンガ模様のクロスを貼っているに過ぎない代物であったり。
例えば、米の価格よりも、輸入させられる肥料の値段の方が高かったり。
例えば、貧困に喘いでいる国民をほったらかして、侵略者プーチンへ3000億円もの軍事費用を肩代わりしたり。
例えば、テレビに出演する女性タレントはひたすら断食を強要されて、顔にメスを入れてまで幼さを追求し、その成長とのギャップに苦しんで、「卒業」して無職になったり。
例えば、食料の備蓄は半年程度しかないのに、何千年とも言われる放射性廃棄物の備蓄は増え続けていたり。
例えば、ベッドしか入らない賃貸アパートに毎月お布施のごとく大金を払い続けたり。
例えば、新しい病名をつけては、薬漬けにされて、いつまで経っても社会復帰できなかったり。
例えば、駅や河川敷で段ボールにくるまったホームレスを救わずに、外国から労働者を雇って、難民を受け入れる寛容さをアピールしたり。
挙げ出したらきりがないが、そうやって人々は仮面を被って、潜在意識に蓋をし、自分を誤魔化して、他人を騙して、気がついたら沸々と良心の呵責に苛まれて、その内を自認すらできないまま、仮面が本面にくっついて離れなくなる。
あらゆることが出鱈目で、持続不可能な見栄だけを追って、温泉にでも入ったら治った気がする。
「愚の骨頂」「バカの極み」とはこの国だ。
話を戻すと、先の動画は「循環農法」という牛乳生産から、土地も、経営者も、家畜も、消費者も、当たり前の生き甲斐を取り戻すべく足掻きに注目したい。
溜め込むべきは金ではなく、美味しい牛乳であり、チーズであり、保存食であり、健全な循環を崇めることが、この馬鹿げた拝金社会を駆逐することを切に願う。